『家庭雑誌』の再興

 堀保子宛・明治四十二年二月一日 手紙見た。ちょうど四カ月目に懐かしい筆跡に接したので非常に嬉しかった。今日は雑誌の発刊についてというので臨時発信の許可を得た。よってこの返信を書く。『家庭雑誌』の再興も面白かろう。僕も賛成する。そこで大体の方針に関する僕の意見を述べて見よう。 まず第一に改題するがいい。いつかも議論のあったように『新婦人』などはどうかと思う。そしてその内容も、兄などの言うがごとくに、ただ没主義な卑俗なものにしてしまうよりは、やはりその名の実をとって新婦人主義《フェミニズム》を標榜して貰いたい。もっともこれも程度の問題だろうが、最初の『家庭雑誌』くらいのところかあるいはもう少し進んだくらいのところなら、別に差支えもなかろうじゃないか。そして従来の多少の革命的の部分を科学的に代えるのだね。まず売捌きの点から考えてもこの方が都合よかろう。今さらとても他のいわゆる婦人雑誌と競争のできるものでもなし、読者はやはり昔からのお馴染のほかに、主として同志の中に求めねばなるまい。 同志と言っても口でこそ大きなことも言え、その実際生活においてはみなこの『新婦人』以下のところに蠢いているのだ。それに今は、仲間の雑誌が何もないことと思う。したがって同志はよほど読物に餓えているに違いない。またこんな際に雑誌を出すものの義務は、多少なりとも同志間の連絡あるいは広告の機関に供するにあると思う。何だか事がむずかしくなるようだけれど、ちょっとした個人消息を載せるだけでもどれほどその助けになるか知れない。 編集人は兄の方で適当の人があるかも知れんが、こんな意味からもやはり守田に頼むのがよかろう。ちょうど婦人運動をやりたがってもいるのだし、自分のもののようにして骨折ってくれるに違いない。そして幽月などの新婦人連に大いに助力して貰うのだね。また、秋水にもこんどは是非毎号筆を執って貰いたい。科学の話などはお得意のものだろう。

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