清涼飲料という名前

 誰かが言った。そうそう、金線サイダーってのは、相当方々で幅を利かしていたっけ。清涼飲料、何々サイダーという広告。 清涼飲料という名前は、うまいなあ。如何にも、サイダーが沸騰して、コップの外へ、ポンポンと小さな泡を飛ばす有様が浮んで来るようだ。 清涼飲料にも、いろいろあった。と「カフエーの夜」から、思い出が又拡がった。 金線サイダーも、リボンシトロンも、子供の頃からよく飲んだ。が、やっぱり一番勢力のあったのは、三ツ矢サイダーだろう。 矢が三つ、ぶっ違いになっている画のマークは、それに似たニセものが、多く出来たほどだった。 その頃、洋食屋でも、料理屋でも、酒の飲めない者には必ず「サイダーを」と言って、ポンと抜かれたものである。 ビールや、サイダーに、「お」の字を附けたのは、何時の頃からであろうか。 三ツ矢サイダーの他に、小さい壜の、リボンラズベリーや、ボルドー、リッチハネーなんていうのもあった。が、それらの高級品よりも、われら子供時代の好みは、ラムネにあったようだ。 ラムネを、ポンと抜く、シューッと泡が出る。ガラスの玉を、カラカラと音をさせながら転ばして飲むラムネの味。 やがて、僕等が中学生になった頃だと思うんだが、コカコラが、アメリカから渡来したのは。 いまのコカコラとコカコラが違った。 第一、名前も、コカコーラと、引っぱらずに、コカコラと縮めて発音していた(日本ではの話ですよ)。そして、名前ばっかりじゃないんだ、味も、色も、確かに違っていた。 色は、いまのコーラが、濃いチョコレート色(?)みたいなのに引きかえて、アムバーの、薄色で、殆んど透明だったようだ。 味には、ひどく癖があって、一寸《ちょっと》こう膠《にかわ》みたいなにおいがする―兎《と》に角《かく》、薬臭いんだ。だから、いまのコーラとは、殆んど別な飲みものだと言っていい。コカコラの中に、コカインが入っていたってのは、その頃の奴じゃないだろうか。いまのには、そんなものが入っているような気がしないし、第一、うまくない。

— posted by id at 01:50 pm  

T: Y: ALL: Online:
Created in 0.1724 sec.

http://c-gen.jp/