終戦直後

 尤《もっと》も、終戦直後、GIたちの、おこぼれを頂戴して飲んだ頃は、うまいなあと思った。僕は、併し、ペプシコーラの方が好きだったが。 春山行夫氏が東京新聞に書かれた「コカコーラの不思議」の中に、 ……コカコーラは消防自動車のような赤いポスターや看板を出すので、美術の国イタリアは、その点を嫌がっている。…… とある。 全く、コカコラの赤は、あくどい。 コカコラばっかりじゃあない。アメリカは赤が一番嫌いな筈だのに、宣伝や装飾には、ドキツイ赤を平気で使う。赤や黄色、青の原色そのままが多い。 これは然し、僕の観察によると、戦争前は、アメリカ自身も、もう少し好みがよかったと思うんだが如何だろう。 例えば、タバコの Lucky Strike だ。白地に、まっ赤な丸(日の丸ですな)のデザインでしょう、今は? ところが、戦争前は、白地のところが、ダークグリーンの、落ち着いた色だった。それを覚えている方もあると思う。今のより、ずっと感じのいいデザイン、色彩。従って、タバコの味も、もっとうまかった。 いいえ、タバコの内容のことを言ってるんじゃない、箱のデザインや色が、よければタバコも、うまくなるって言ってるんです。ほんとなんだ、これは。 あの煙草が好き、こっちの方がいい、という人々は、各々の好きな、デザインの、好きな色の箱を選んでいる場合が多い。例えば、キャメルが好き、ラッキイ・ストライクでなくっちゃいけないっていうような、タバコ好きでも、まっ暗なところで、一本吸わして、それが何という煙草か、ハッキリ判ることは、めったにないものである。 タバコなんて、そんなものである。 タバコのデザインばっかりじゃありません。昔はコカコラの広告にしたって、真っ赤な消防ポンプじゃなかった。もっと、まともな顔をしていた、確かに。 食べものの味にしたところで、アメリカ料理は、まずいという定評だが、戦前は、アメリカだって、もっと美味かったんじゃなかろうか。それは、僕が度々書いていることだ、少くとも、東京に於けるアメリカ料理は、戦前の方が、ずっと美味かったんだから、本国の方もそうだったんじゃないか、と思うんです。 してみると、戦争って奴が、アメリカ自身の文化をも、ブチこわしたんだな、つまり。

— posted by id at 01:51 pm  

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